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モビリティとは?意味や取り組み、社会にもたらす変化について

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2022.05.16(最終更新日:2022.08.10)

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近年、「スマートモビリティ」や「先進モビリティ」など「モビリティ」という言葉が浸透してきています。
この記事では、モビリティとは何か、国が推進する取り組みや社会にもたらす変化について紹介します。

モビリティとは

モビリティ(mobility)とは、「流動性」や「移動性」、「動きやすさ」といった意味を持つ英単語で、自動車や公共交通機関などの交通手段や移動サービスに関する用語として使われています。また、従来からある交通手段や移動に変化をもたらす新たなテクノロジー(自動運転やAI、IoT(※)、ドローン、ロボットなど)は「スマートモビリティ」と呼ばれています。

※IoT…Internet of Things(モノのインターネット)の略称で、「さまざまな物がインターネットにつながること」を指す用語。

国が推進するモビリティに関する取り組み

日本におけるモビリティは、解決すべき課題が残されているのが現状です。
例えば、国民一人ひとりの移動手段の確保や利便性の向上、交通事故の削減や物流・人流の効率化を通じた環境負荷の低減、少子高齢化に伴う人材不足などです。
これらの課題を解決するためには、国や地域の自治体、民間企業が相互に連携し、制度やサービスの整備を行う必要があります。
国が地域と企業の協働による意欲的な挑戦を促し、モビリティに関する取り組みを積極的に推進することで、地域が抱える交通・移動の課題解決や地域モビリティの維持・強化、地域経済の活性化も期待することができます。

現在、日本政府では国を挙げて以下のような取り組みを推進しています。

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)

MM(モビリティ・マネジメント)

グリーンスローモビリティ

ここでは、国が推進するこれら3つの取り組みについて、概要や特徴を説明します。

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)

MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)とは、利用者一人ひとりの移動ニーズに対応して複数の公共交通機関やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせ、ユーザーの利便性を大幅に高める次世代の交通サービスを意味する言葉です。
MaaSは、観光や医療など目的地における交通以外のサービスとの提携や、さまざまなテクノロジーの導入による移動の効率化によって、ただ単に移動が便利になるというだけではなく、地域が抱える課題解決や地域経済の活性化につながることが期待されています。
特に国土交通省では、関係府省庁と提携しながら、MaaSの早急な全国的普及に取り組んでいます。
施策の一つである「日本版MaaS推進・支援事業」では、生活・観光サービスや社会インフラにおける地域特性に応じた実証実験を行っています。この事業により、公共交通機関の維持や活性化、地域や観光地の移動手段の確保や充実といった、それぞれの地域が抱える課題解決を目指しています。

MaaSについての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
MaaS(マース)とは何?意味や目的、将来性について分かりやすく解説

モビリティ・マネジメント(MM)

モビリティ・マネジメント(MM)とは、「過度にマイカーに頼る生活」から「徒歩・自転車・公共交通機関を中心とした多様な交通手段を適度に利用する生活」への自発的な行動の転換を促す取り組みを意味します。
交通システムの導入や運用の改善なども同時にバランス良く進めることで、一人ひとりの交通行動や意識を変えるための施策を継続的に展開していくことが期待されます。

グリーンスローモビリティ

グリーンスローモビリティとは、時速20km未満で公道を走ることができる、電動車を活用した4人乗り以上の移動サービスであり、以下のような5つの特徴があります。

・Green(CO2排出量が少なく、家庭用コンセントで充電可能)
・Slow(観光を楽しむのに最適な速度)
・Safety(速度制限があり、高齢者も運転可能)
・Small(小型のため狭い道でも走行しやすい)
・Open(窓部分にガラスがなく、開放感がある)

グリーンスローモビリティは、環境への負荷が少なく狭い路地も通行が可能なため、高齢者の移動手段の確保や、観光の一助となる新たな移動サービスとして期待されています。
国土交通省や環境省では、低速で環境に優しいグリーンスローモビリティを既存の移動サービスに代わるものとして推進しており、高齢化が進んでいる地域や観光客の足として先進技術を活用したグリーンスローモビリティの導入を促進すべく、実証実験の支援をしています。

新たなモビリティが普及するとどんな社会になる?

近年、MaaSやグリーンスローモビリティの普及に向けた取り組みが進むと同時に、自動運転車やAI、IoTを活用したドローン、ロボットなど、スマートモビリティと呼ばれる新たなモビリティへの注目度も高まっています。
新たなモビリティが普及することで、移動の利便性が向上するだけではなく、移動手段の確保、都市部の渋滞緩和、交通事故の削減、CO2排出量の低減、配送の効率化や買い物難民の解決など、私たちの社会にさまざまな良い変化をもたらします。
そこでここからは、モビリティの多様化によってどんな社会になるのか、先進事例と合わせて紹介します。

自動運転バス・タクシーの普及による移動手段の拡大

次世代に向けた新たなモビリティとしては、自動運転バスやタクシーの普及に向けた取り組みも進められています。自動運転を取り入れた移動手段の多様化は、地域創生や高齢者の外出機会の創出につながる可能性があります。
また、バスやタクシーの運転手不足などの課題解決の一助ともなるでしょう。例えば、秋田県北秋田郡上小阿仁村では、高齢化が進行する中山間地域の生活の足を確保するために、道の駅「かみこあに」を拠点とした各集落を結ぶルートで自動運転サービスを行う長期実証実験を2018年より行っています。その後、2019年には山間地とその周辺の地域などに、道の駅などを拠点とした全国初の自動運転サービスを開始しました。

また、茨城県堺町では生活路線バスとして、2020年11月から自動運転バス3台を導入し、国内の自治体では初となる公道での定常運行を実施しています。この自動運転バスは、車いすのままスロープで乗ることができたり、ペットを連れたままバスに乗ることができたりと、利用者のニーズに柔軟に対応したサービスが展開されています。また、自動運転バスを導入したことで沿線上の路上駐車が減少したなど、住民の行動や意識を変えることにつながった点にも注目が集まっています。

このように自動運転バス・タクシーの普及がさらに進むことで、自動運転タクシーが病院の通院日に高齢者の自宅まで迎えに来るといった活用方法も期待できます。

自動運転化による渋滞緩和や交通事故の削減

新たなモビリティの普及により、私たちの移動手段は今後多様化していくことが想定されていますが、自家用車についても2025年を目途に自動運転レベル4(高速道路での完全自動運転)を目指し、国と民間企業が連携しながら取り組みを進めています。
レベル4以上の自動運転車はシステムが主体となり、常に適切な車間距離をとって走行するため、都市部の渋滞緩和や人為的なミスによる交通事故の削減にもつながるでしょう。

自動運転についての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
自動運転とは?メリットや課題、自治体の取り組み事例を紹介

自動車の電動化(EVシフト)によるCO2排出量の低減

経済産業省では2050年のカーボンニュートラル実現に向け、2035年までに乗用車の新車販売において電動車の割合を100%とすることを目指しています。
マイカーに加え、バスやタクシーについても、ガソリンなどの化石燃料でエンジンを動かす車が減り、EV(電気自動車)が増えていくことで、CO2排出量の低減、環境負荷の軽減につながる効果も期待できるでしょう。

新たな移動手段による配送の効率化

近年、ドローンや自動配送ロボットといった、新たな移動手段の出現にも注目が集まっています。
例えば、楽天グループではドローンの物流サービス「そら楽」の実現に向けて、千葉県御宿町、福島県南相馬市小高区、神奈川県横須賀市猿島、三重県志摩市間崎島、長野県北安曇郡白馬村などで実証実験を行いました。
また、長崎県五島市では、本土と離島間における輸送環境の向上に向けて、ジップライン社製のドローンを活用し、2次離島地区の診療施設などへ医薬品を配送する長期実証実験を実施しています。
現在、こうした低速・小型の自動配送ロボットの早期社会実装を目指し、ルール整備などの取り組みが行われているのです。

移動スーパーによる買い物難民の解決

自動運転やグリーンスローモビリティ、ドローンといった新たなモビリティは、移動だけでなく物流や医療、小売などのサービスと連携することで、日常の買い物に不自由している「買い物難民」のいないスマートモビリティ社会の実現も期待できます。
経済産業省の統計によると、買い物難民は全国約700万人にものぼるとされ、さまざまな地域で買い物難民を減らす取り組みが進行しているのです。
例えば、徳島に本社を構える移動スーパー「とくし丸」は、生鮮食品を含む400品目以上の商品を積載した冷蔵庫付きの専用軽トラックが各戸の玄関先まで出向くことで、買い物難民が便利に買い物を楽しめる機会を設けています。
移動スーパーは買い物の機会を提供するだけでなく、地域の「見守り隊」としての役目を果たすことも目指しているため、高齢化が進む地域では移動スーパーの存在が重宝されるでしょう。
将来的には移動スーパーだけではなく、自動運転の送迎車で買い物に出向いたり、EC(電子商取引)ではドローンによる宅配も選べたりといった取り組みも検討されています。

モビリティの意味を知り、さまざまな新しいモビリティサービスに目を向けよう

AIやIoTなどの最新技術をモビリティに取り入れることで、私たちの生活を便利にするだけではなく、地域課題の解決や経済の活性化につながることが分かりました。
今回紹介してきた日本国内の事例はもちろん、世界中でも研究開発が進められています。
私たちの日常に新たなモビリティサービスが導入され、スマートモビリティ社会が実現する日を楽しみに待ちながら、ぜひこの機会に、モビリティの意味や国の取り組みを知ることから始めてみてはいかがでしょうか。
本記事で紹介した事例は、以下を出典としますが、今後の技術進展等、実現には不確実性があるものを含んでおります。