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MaaS実証実験はどのように実施されている?結果や今後への影響について

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2022.05.17(最終更新日:2022.09.15)

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MaaS(マース)は「Mobility as a Service」の頭文字を取ったもので、交通機関に関する移動・予約・決済などが行えるサービスのことを指します。あらゆる地域・人々が新たなモビリティサービスを利用するための仕組みであるMaaSの実現に向けて、現在さまざまな地域で実証実験が実施されています。
そこで今回は、MaaSの実証実験はどのように実施されているのか、結果や今後の影響について紹介します。

日本ではどのようなMaaSの実証実験を行っている?

日本国内では、MaaSの導入による地域課題の解決と、全国への横展開のモデルとなる先進事例の創出を目的として実証実験を行っています。
国土交通省は、MaaS事業を「大都市近郊型・地方都市型」「地方郊外・過疎地型」「観光型」の3つに分類し、2019年から実証実験を開始しました。

大都市近郊型・地方都市型

大都市近郊では、主に次のような地域課題が挙げられます。

・駅と住宅地をつなぐ利便性の高いラストワンマイル交通手段の不足
・イベントや天候などによる局所的な混雑

そのため、大都市近郊型のMaaS事業は、駅を核とした利便性の高い生活圏の確立や、特定条件下で発生する局所的混雑の緩和などを目的として導入が進められています。
例えば、兵庫県神戸市では、高齢化が進んだニュータウンを核として、地域住民のニュータウン地域内外での移動、移動先における活動を支援するためアプリケーションを活用した「まちなか自動移動サービス事業」の実証実験を行っています。
一方、地方都市では、主に次のような地域課題が挙げられます。

・自家用車への依存
・公共交通サービス水準および事業採算性の低下
・高齢者の移動手段の確保
・運転手の不足

そのため、地方都市型のMaaS事業は、自家用車に依存しない地域内移動の創出や、高齢者の移動手段の確保および外出促進を目的として導入が進められています。
例えば、群馬県前橋市では社会実装に向けて、自動運転バスを含む多くの交通モードを統合したMaaSアプリを構築し、タクシーやデマンドバスにはAI配車システムを搭載して一括経路検索・予約を可能にするなど、交通ネットワーク再編作業を有効化する「MaeMaaS(前橋版MaaS)」の実証実験を行っています。

地方郊外・過疎地型

地方郊外や過疎地では、主に次のような地域課題を抱えています。

・地域交通の衰退および交通空白地帯の拡大
・自家用車への依存
・高齢者の移動手段の確保
・運転手不足

そのため、地方郊外・過疎地型のMaaS事業は、自家用車に依存しない地域内移動の創出や、交通空白地帯での移動手段の確保および高齢者の外出促進を目的として導入が進められています。
例えば、島根県大田市では、過疎地における生活交通の確保策として、AIを活用した配車・予約制御システムを備えた定額タクシーを中心とした実証実験を行っています。

観光型

観光地での地域課題としては、次のことが挙げられます。

・地域の主要産業としての観光産業の活性化
・既存公共交通の混雑

観光型のMaaS事業は、観光客の回遊性の向上や訪日外国人の観光体験の拡大などを目的として、導入が進められています。
瀬戸内エリアでは、国内外の瀬戸内観光客を対象に、海・陸・空の交通機関やツアーバス等観光事業者など、事業者同士の連携を強化した提案型MaaSを提供し、自由な移動網による国際観光先進都市の創造を目指した実証実験を行っています。

地域新MaaS創出推進事業の実証実験とは

ここまでは、日本国内で行われている実証実験をタイプ別に紹介しました。
紹介してきた取り組み以外にも、経済産業省では、MaaSのさらなる高度化を目指し、事業性向上・社会的受容性向上のポイントや地域経済への影響、制度的課題などを横断的に分析する「地域新MaaS創出推進事業の実証実験」を支援しています。
地域新MaaS創出推進事業では、以下のA~Eの5つの要素について、地域ごとの特性や課題を踏まえたうえで、さらなる⾼度化に取り組んでいます。
この実証実験の結果をもとに全国に展開するため、データの活用・連携、人材の確保、マッチング機能の強化、持続性の確保といった横断的な視点からの検討が併せて行われます。

A:ほかの移動との重ね掛けによる効率化

2021年度の地域新MaaS創出推進事業では、限られたリソースを複数の用途・事業者で活用する目的で、ほかの移動との重ね掛けによる効率化の取り組みが行われました。
例えば、愛知県春日井市では、自動運転と連携する取り組みとして、オンデマンド型自動運転サービスを活用した貨客混載サービスによる住民の利便性・満足度の調査と事業採算性の検証が行われました。
ほかにも、宮城県仙台市では福祉車両の非送迎時間を活用した移動支援の提供による事業性向上効果の検証、香川県三豊市では食事配達サービスの提供による事業性向上効果の検証などが行われました。

B:モビリティでのサービス提供

サービスのモビリティ化によって効率化を図る取り組みには次のような事例があります。
北海道帯広市では、旅客バスを改造してマルシェ機能を付与した路線バスの運行を行い、交通事業者の収益多角化や事業改善効果、地域住民に受容されるかの検証を行っています。
ほかにも、三重県大台町、多気町、明和町、度会町、大紀町、紀北町の6町連携で、移動診療車を活用した複数自治体にまたがる広域医療サービスの受容性・事業性の検証が行われました。

C:需要側の変容を促す仕掛け

時間帯や需要に応じた行動変容を促すことで、地域経済を活性化しようという取り組みもあります。
島根県美郷町では、運行データなどを活用してタクシーの運賃をサブスクリプション化し、最適な価格水準を探索する検証が行われています。
また、北海道室蘭市では需要側・供給側双方に働きかけた最適なオンデマンド交通のサービス水準の探索、沖縄県北谷町では自動運転と連携する取り組みとしてレンタカー・航空機の接続最適化の効果を検証しています。

D:異業種との連携による収益活用・付加価値創出

異業種との連携による新しい複合サービスの提供に向けた取り組みも行われています。
福島県会津若松市や茨城県日立市では、構築済みのMaaS基盤を活用し、地元商店におけるレシート情報を活用した詳細な売上算出に基づく成功報酬型広告収入モデルの実装が行われたほか、兵庫県播磨科学公園都市では、商業施設に加え、オフィスや研究機関とも連携したモビリティサービス提供の仕組みが検証されています。

E:モビリティで関連データを取得、都市・交通政策との連携

モビリティデータや異業種データを取得し、可視化することで、より効率的な移動を実現しようという取り組みも報告されています。
福井県永平寺町では自動運転と連携する取り組みとして、コネクテッドカー(※)の普及を見据え、走行データを活用した自家用有償ドライバーの質の担保に向けた検証がされています。
また、埼玉県入間市では、交通サービスなどの提供で得られた移動・健康データを活用した、交通政策・福祉政策の連携・一定運用に向けた検討が行われました。

※コネクテッドカー…ICT端末としての機能を有する自動車のこと。ネットワークに常時接続し、車両や運転者の状態を把握する機能を持つ。

MaaS実証実験の結果、今後への影響は?

MaaS実証実験の結果によって、地域課題の解決に向けた一定の成果が得られています。
経済産業省は、実証実験で得られた成果や課題を踏まえ、社会実装に向けた知見集や、今後の取り組みの方向性を取りまとめた資料を地域や企業などに対して発信しています。
また最近では、企業も新しいモビリティ社会への取り組みとして、MaaSの実証実験をスタートさせています。
このように、現在日本ではさまざまなMaaSの実証実験が行われていますが、その一方で、実証実験を横断的に分析したことで、MaaSを全国的に社会実装・高度化していくためには、さらなる取り組みが必要であることも課題として認識されるようになりました。
MaaSの早期普及を目指し、国土交通省や経済産業省を中心に、地域や企業がそれぞれの連携に向けたさまざまな取り組みを行うとともに、前年度の課題を踏まえた実証実験が引き続き予定されています。

実証実験が続けられるMaaSに期待しよう

日本国内MaaSの実証実験について紹介してきました。実証実験で得られた結果や課題を踏まえ、今後もMaaSの普及、実現に向けたさらなる取り組みが各地域で予定されています。

MaaSの社会実装は決して簡単なことではありません。あらゆる地域であらゆる人々が新たなモビリティサービスを利用できる社会の実現に期待して、今後の日本版MaaSの動向にぜひ注目していきましょう。

MaaSの概要や将来性についての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
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