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MaaSレベルとは?どのように分類される?レベルごとの状態を具体例で解説

この記事は1年以上前に書かれたものです。現在は状況が異なる可能性がありますのでご注意ください。

2022.05.17(最終更新日:2022.09.15)

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近年、次世代の交通サービスとして、「MaaS(マース)」という言葉を聞く機会も増えたのではないでしょうか。
新しい概念であるMaaSには、サービスの統合状況に応じたMaaSレベルというものがあります。
この記事では、MaaSレベルとは何か、分類方法とそれぞれの事例を紹介します。

MaaSレベルとは

MaaSは「Mobility as a Service」の頭文字を取ったもので、「サービスとしての移動」という意味になります。
地域住民や旅行者一人ひとりの移動ニーズに対応し、複数の公共交通機関やそのほかの移動サービスを最適に組み合わせて、検索や予約、決済などを一括で行えるサービスのことを指し、AIや自動運転などのさまざまなテクノロジーを掛け合わせた次世代の交通サービスとしても注目されています。

そんなMaaSには、サービスの統合程度に応じた「MaaSレベル」が設定されています。
MaaSレベルとはスウェーデンのチャルマース工科大学の研究者によって発表されたもので、0〜4にレベル分けされています。そこでまずは、MaaSレベルの定義として0〜4までの分類を見ていきましょう。

MaaSレベル0

MaaSレベル0とは、それぞれの事業者が独立してモビリティに取り組んでいる状態、つまり「統合なし」の状態を指しています。例えば、経路検索や予約・配車サービス、駐車場予約サービスといった各事業者が単独でバラバラのモビリティサービスを提供している段階がMaaSレベル0に該当します。

MaaSレベル1

MaaSレベル1とは、所要時間や料金、予約状況など、異なる交通手段における一定の情報が統合されている状態を指します。MaaSレベル1の段階になると、「電車とバス」や「飛行機と電車」など、複数の移動手段を組み合わせた交通提案や価格情報を見ることができるようになります。

MaaSレベル2

MaaSレベル2とは、目的地までに利用する複数の移動手段を一括で比較することができるだけではなく、予約や決済などをワンストップで行える「予約・決済の統合」を指します。検索から予約、支払いまでをアプリなどで行うことができるため、クレジットカードや電子マネーといったキャッシュレス決済が必要となります。

MaaSレベル3

MaaSレベル3とは、それぞれの事業者間の連携が取れた「サービス提供の統合」を指し、複数の交通サービスを定額制やパッケージとして利用することができます。
MaaSレベル3の段階では、公共交通機関だけではなく、タクシーやレンタカーも統合されることになります。

MaaSレベル4

MaaSレベル4は、国や自治体が政策レベルで連携を行い、まちづくりや交通制御による渋滞の緩和や環境負荷の低減、人やもののコントロールによる移動問題の改善が図られている「政策の統合」を指します。
MaaSレベル4は、国家プロジェクトとして取り組むレベルであり、データ分析による政策立案や法改正も必要となります。

日本のMaaSレベルとサービス例を世界各国と比較

サービスの統合程度に応じて設定されたMaaSレベルですが、日本と世界のMaaSレベルは現状どの段階にあるのでしょうか。ここからは、MaaSレベルや具体的なサービスの事例を日本と世界各国でそれぞれ紹介します。

日本のMaaSレベル

日本のMaaSは、世界各国と比較してもそれほど進んでいるわけではなく、2022年4月時点のMaaSレベルは0〜1だと言われています。

「ジョルダン」や「NAVITIME」などの乗り換え案内サービスはあるものの、決済までをワンストップで提供できるところまでには至っていない状態です。

しかし、近年鉄道会社や自動車メーカーが中心となってMaaSの実現に向けた取り組みが進められており、東京メトロの「my! 東京MaaS」やトヨタ自動車の「my route」など、各社がMaaS事業に参入しています。

フィンランドのMaaSレベル

2016年からMaaSアプリ「Whim(ウィム)」のサービスを提供しているフィンランドのMaaSレベルは3だと言われています。

Whimは、鉄道・バス・タクシー・自転車などの複数交通モードの検索・予約・決済を一元的に行うことができ、世界初の交通サブスクリプションモデル(定額制)が特徴です。
Whimの導入により、公共交通の分担率は48%から74%まで増加、毎月のタクシー乗車数や支払金額が導入前よりも4倍に増加するといった効果が見られています。

ドイツのMaaSレベル

ドイツでは、全土でmoovel社のモバイルアプリ「moovel(ムーベル) app」を活用し、現在のMaaSレベルは2だと言われています。

moovel appは、鉄道やタクシー、カーシェアなど複数の交通機関を使った経路が検索可能な「複数交通モード」が利用できるアプリです。また、経路検索だけでなく、予約・決済も同一アプリ上で行うことができます。

moovel社ではmoovel app以外にも、交通事業者向けアプリ「moovel transit」、交通事業者向けソフトウェアプラットフォーム「moovel on-demand」の提供を行っており、公共交通機関やタクシー、カーシェアなどを統合した、都市交通をシームレスにネットワーク化するサービスの開発や支援を行っています。

MaaSレベルが上がるとどうなる?

今後日本においてもMaaSへの取り組みが進むことで、よりレベルの高いモビリティサービスが提供されるようになり、MaaSレベルは上がっていくことが期待できます。

そこで続いては、MaaSレベルが上がると私たちの生活はどう変わっていくのか、予想される変化について考えていきましょう。

混雑の緩和・移動の利便性向上

MaaSレベルが上がることで、複数の公共交通機関や移動サービスをシームレスに利用することが可能となります。

さらに、タクシーやレンタカーが定額料金で利用できるようになり、カーシェアリングやレンタサイクルも普及していくことが予想されます。自家用車以外の交通手段の選択肢が広がることで、移動の利便性はより高まっていくでしょう。

また、移動の利便性が向上することは、これまで利用できる交通手段が少なかった交通弱者の外出機会創出や地域活性化、交通混雑の緩和につながるなどの発展的な効果も期待できます。

物流サービスの効率化

MaaSレベルの向上は、物流サービスの効率化にも影響を与えると考えられています。
荷主・運送事業者・車両の物流・商流データが連携し、さらに物流機能の自動化を掛け合わせることで、運転手一人あたりの輸送量を増加させ、物流業界における人手不足の解消やCO2排出量削減などの社会問題解決や付加価値の向上につながることが期待できます。

働き方改革にもつながる

MaaSレベルが上がると、働き方改革につながる可能性もあります。

例えば日本マイクロソフト株式会社では、オフィスワークとリモートワークの両立として、MaaSによる働き方改革を推進しています。出先から出先へと日々フレキシブルな移動が必要となる都市部の社員に向けて、MaaSによって1日の最適な交通移動経路や働く場所を提案する取り組みを推進しています。
これは、MaaSによって1日のなかで多くの時間を占める移動の効率化を図り、空いた時間をワークライフチョイスとすることで、社員が柔軟な働き方を選択できるようになるという取り組みです。

また、約60%が自動車通勤をしている地方で働く社員に向けては、オンデマンド送迎や相乗り、通勤バスなどの導入を促進しています。
これにより朝夕の通勤ラッシュを避けることができるほか、移動中の車内でも業務ができるようになるため、業務時間の効率的な活用につながることが期待されています。

MaaSレベル向上を目指す今後の取り組みや展開に期待しよう

今回はMaaSレベルの分類や、各国のMaaSレベルがどの程度進捗しているかについて紹介してきました。日本のMaaSレベルは現在0〜1だと言われていますが、今後MaaSレベルが上がることで、私たちの生活における移動の利便性は向上し、交通混雑の緩和や物流サービスの効率化など、さまざまな恩恵を享受できます。

また、スマートモビリティチャレンジが経済産業省・国土交通省の元に進められており、全国でMaaSの普及に向けたさまざまな取り組みが行われています。国や自治体、モビリティサービスを提供する事業者間の連携によって、日本のMaaSレベルも今後大きく成長していくことが期待できるのではないでしょうか。

MaaSの概要や将来性についての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
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