EVバッテリーとは
バッテリーとは、充電と放電を繰り返し可能な電池のことを指します。EV用のバッテリーは、EV電池や電気自動車用蓄電池と呼ばれることもあり、EVの走行には欠かせないパーツの一つです。
EVバッテリーはその種類や性能によって、蓄電容量や大きさ、充電時間やコストが異なります。
これからEVの購入を検討している方は、ぜひEVバッテリーにも注目してみてはいかがでしょうか。
EVバッテリーの主な種類
2022年現在、実用化されているEVには「鉛蓄電池」と「リチウムイオン電池」という2種類のバッテリーが搭載されています。
まずは、それぞれのバッテリーの特徴や役割について説明します。
鉛蓄電池
鉛蓄電池は、EVだけでなくガソリン車にも広く搭載されているバッテリーの一つで、EVの場合は、鉛蓄電池とリチウムイオン電池の2種類が搭載されています。鉛蓄電池は、自動車が走行する際に使うエネルギーだけでなく、オーディオやエアコンなどの車載装備を動かすための「補機用バッテリー」として活用されます。
鉛蓄電池の材料となる鉛は安価でコストパフォーマンスが高く、また短時間で大電流を流したり、小電流を長時間流しても性能が安定しているため、EVを含む自動車の補機用バッテリーとして適しています。
リチウムイオン電池
リチウムイオン電池は、軽量性に優れ、環境に優しいという点から、EVやPHEV(プラグインハイブリッド自動車)の駆動用バッテリーとして広く用いられています。
また、使用後に資源としてリサイクルや用途を変えてリユースすることもできるため、サステナブルな社会の実現にも役立っています。リチウムイオン電池は高電圧でエネルギー密度も高く、大容量の電力を蓄えられるため、EV以外にも産業用のロボットや国際宇宙ステーションにも搭載されるほど高い機能が備わっているのも特徴です。
EVバッテリーの寿命はどれくらい?
EVバッテリーは、消耗品のため長く使用していると劣化は避けられません。EVバッテリー劣化の目安として、蓄電できる電気の容量が減少することが挙げられます。「新車購入から何年」などの明確な数字があるわけではありませんが、蓄電量が通常の70%を下回るようになってきたら、バッテリー交換またはEV自体の買い替えの検討が必要となります。EVは自動車メーカーによって一定の保証(期間・走行距離)がされているケースがほとんどのため、購入時にしっかりと確認しておくことが大切です。
例えば、日産LEAFでは「新車登録から8年間または走行距離16万kmまでのどちらか早いほう」、三菱i-MiEV(17型)では「初度登録後8年以内(ただし走行16万km以内)」となっています。
さらに、EVバッテリーの寿命の長さは、使用状況に左右されると言われています。
日産自動車株式会社では、リチウムイオン電池の寿命を延ばすために、以下のような運転や充電を推奨しています。
車両を外気温が49℃以上の場所に24時間以上放置しない
車両を外気温が‐25℃以下の場所に7日間以上放置しない
リチウムイオンバッテリー残量計の表示が0(ゼロ)かほぼ0(ゼロ)の状態で14日間以上放置しない
外気温が極めて高いときは、運転または充電を控える
運転後は、車両とリチウムイオンバッテリーが冷えるのを待ってから充電する
直射日光の当たらない、熱源から離れた涼しい場所で駐車又は車両を保管する
頻繁に(週に1回以上)急速充電するときは、充電量を80%以下にする
満充電に近い状態で繰り返し充電を行うのは控える
リチウムイオンバッテリーを充電するときは、普通充電を使用し、急速充電の使用は最小限に抑える
適切な速度で走行する
ECO(エコ)モードで走行する
など
引用:日産自動車株式会社「リチウムイオンバッテリーの寿命」
EVバッテリーの交換費用はどれくらい?
EVバッテリーの寿命により蓄電できる電気の容量が落ちてきた場合には、バッテリーを交換することも可能です。実際にかかる交換費用はメーカーによって異なりますが、バッテリー容量に比例して金額が高くなります。また、EVバッテリーは、EVを構成するパーツのなかでも高価であるため、性能が落ちた場合には、バッテリーのみを交換するよりもEV自体を買い替えたほうが良いこともあるでしょう。
EVバッテリーにおける現状の課題とこれから
ここからは、EVバッテリーが現在抱える課題と、課題解決に向けた企業の取り組みを紹介します。
EVバッテリーの現状
価格が高額である
EVの駆動用バッテリーとして用いられているリチウムイオン電池は、高性能であるがゆえに価格も非常に高額です。よってEVの販売価格にも大きく影響するため、EVの普及促進を行うには価格的な課題もクリアしていく必要があります。
交換式ではなく充電式である
EVバッテリーは充電式の電池ですが、優れた性能を持つ電池でも、繰り返し充電と放電を行うことによる劣化は避けられません。また、充電式のEVバッテリーで長時間の移動をする場合は、途中で充電が不可欠となるため、移動時間に加えて充電時間を考慮する必要があります。
今後に向けた企業の取り組み
より高性能なバッテリーの開発
EVバッテリーが抱える課題の解決に向けて、自動車メーカー各社はバッテリー戦略を発表しています。世界トップクラスのEVバッテリーシェアを誇る中国企業のCATLでは、ナトリウムイオン電池とリチウムイオン電池のセルを統合した新たなバッテリーを発表し、2023年までにナトリウムイオン電池の基本的なバリューチェーンの構築を行うとしています。
日本でも、トヨタ自動車株式会社が全固体リチウム電池の開発に取り組んでおり、次世代型の全固体電池の実用化を目指すと発表しました。
交換・シェアができるバッテリーの開発
本田技研工業株式会社は、EVバッテリーの「コスト」「長い充電時間」「航続距離」の課題を解決するために、簡単に取り外して交換ができるバッテリーパック「Honda Mobile Power Pack(ホンダモバイルパワーパック)」を開発しました。振動や衝撃に強く、水や熱、電磁波による影響を受けないモバイルパワーパックは、1個あたり約10kgで持ち運びにも便利です。
ホンダモバイルパワーパックは、ホンダの電動二輪車(「PCX-Electric」や「Benly e:」など)の座席シート下に2つ搭載されているため、外観も損なうことがありません。今後複数のモバイルパワーパックを充電しながら、「交換・シェア」ができるバッテリー交換ステーションが街中に整備されれば、外出時に充電待ちや電池切れの心配もなくなるでしょう。
モバイルパワーパックは、二輪車やモビリティの駆動用バッテリーとしてだけでなく、別売りの充電・給電器を使用することで電動工具やパソコンなどのさまざまな機器の電源としても活用できます。
EVバッテリーの今後に注目しよう
ここまで、EVバッテリーの特徴や現状の課題、今後について紹介しました。EVバッテリーは繰り返し充電して使うことができますが、使い続けると劣化して性能が落ちたり、交換するにも金額が高かったりとさまざまな課題があります。
しかし、近年では国内外の自動車メーカーが2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、優れた性能とコストパフォーマンスを両立できるEVバッテリーの開発を発表し、新たなEVバッテリーが注目を集めています。今後どのようなEVバッテリーが開発されていくのか、ぜひその動向に注目していきましょう。
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