自動運転とは?
自動運転とは、通常はドライバーが行う運転操作をシステムによって自動化する技術のことです。
自動運転の定義は、搭載されている技術によってレベル分けされています。
車両の加速・操舵・制動をすべてシステムで行うものや、自動ブレーキのみを搭載しているものまで、技術のレベルはさまざまです。
自動運転のレベル
日本における現状の自動運転レベルの定義は、以下の通りです。
レベル | 概要 |
---|---|
レベル1 |
システムが前後・左右のいずれかの車両制御を実施 |
レベル2 | システムが前後・左右両方の車両制御を実施 特定条件下での自動運転機能 |
レベル3 | 条件付自動運転 システムがすべての運転タスクを実行するものの、システムの介入要求などに対してドライバーが適切に対応することが必要 |
レベル4 |
特定の条件下における完全自動運転 特定条件下においてシステムがすべての運転タスクを実施 |
レベル5 | 完全自動運転 常にシステムがすべての運転タスクを実施 |
2022年3月現在、日本ではレベル3に該当する自動運転車まで実用化が進んでいます。
自動運転のレベルについての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
自動運転レベルの定義を分かりやすく解説!レベルが上がるとどうなる?
自動運転の実現にはどんなメリットがある?
日本では、レベル5の完全自動運転の実現には至っていないものの、各自動車メーカーが実現に向けて開発を進めています。
レベル5の完全自動運転が実用化されることで、どのようなメリットがあるのか、以下で詳しく解説します。
交通事故の低減
加速・操舵・制動をすべてシステムで行うレベル5の完全自動運転が実現すれば、車両操縦の主体はドライバーからシステムに移行します。
2021年の警察庁の統計調査によると、日本では交通事故によって年間2,636人が命を落としており、交通事故の多くはドライバーに起因するものであることが分かっています。(2021年〈令和3年 〉実績・警察庁調べ)
つまり完全自動運転が実用化されることで、ドライバーのミスなどに起因する交通事故を防止することにつながり、交通事故発生件数の低減が期待できるのです。
渋滞の解消・緩和
渋滞を引き起こす原因の一つが、不適切な車間距離や加速・減速です。
システムがすべての運転タスクを実施する完全自動運転では、安全な車間距離の維持や適切な速度管理といった技術がすべて自動化されるため、渋滞につながる運転の抑止が期待できます。
渋滞がなくなれば、ドライバーのストレスが軽減されるだけでなく、経済活動の阻害や沿道環境の悪化なども解消されるでしょう。
高齢者の移動手段の確保
日本では少子高齢化が進んでおり、2021年9月15日時点の推計で人口の29.1%は65歳以上の高齢者となっています。(総務省統計局・2021年9月15日現在推計)
地方における公共交通機関は、利用者や運転者不足を背景に衰退してきており、高齢者の移動手段が減少しています。
完全自動運転が実用化されれば、高齢者の移動手段が確保されるほか、車いす利用者にも優しい交通手段として期待が高まっています。
ドライバーの負担軽減
レベル5の完全自動運転車は、ドライバーによる運転操作を必要としないため、ドライバーの負担が軽減されるのも大きなメリットです。
特にドライバー不足に悩むトラック運送業では、自動運転の実現によってドライバーにかかる負担を軽減することができ、働き方改革および生産性の向上につながるでしょう。
国際競争力の強化
完全自動運転の実用化に向けた技術開発は、日本だけでなく欧米でも活発に行われています。自動車産業は日本の基幹産業でもあるため、競争力の確保は必要不可欠です。
自動運転関連技術の開発が進み、パッケージ化に成功すれば国際展開も可能となり、日本の競争力強化につながります。
自動運転の社会実装に向けてあげられる課題
完全自動運転の社会実装は、私たちの生活にさまざまなメリットをもたらしますが、実現に向けては、いくつか解決しなければならない課題もあります。
制度の整備
完全自動運転が実現することで、車両操作の主体はドライバーからシステムに移行します。通常はドライバーが行う加速・操舵・制動をすべてシステムが行うことで、ドライバーに起因する交通事故の防止が期待されていますが、それでも事故やトラブルが起こる可能性はゼロではありません。そこで必要になるのが、自動運転車が満たすべき技術基準の策定や、万が一事故を起こした場合の賠償ルールの整備です。
現在、さまざまな関係省庁の協力のもと、政府主体で自動運転の実現のための制度整備が進められています。
例えば、2020年4月に施行された改正道路運送車両法では、自動運転車の安全基準が策定され、道路交通法の一部を改正する法律において、自動運転技術の実用化に対応したドライバーの義務に関する規定が整備されました。
ほかにも、自動運転による交通事故で生じた損害についても、保険会社から自動車メーカーに対する求償権行使の実効性確保に係る協力体制を構築するため、関係者が検討を進めています。
システム実証
レベル5の完全自動運転の場合、すべての運転タスクはシステムに委ねることになります。
そのため、自動運転車の社会実装に向けては、安全性や信頼性を社会的に認知させるためのシステム実証が不可欠です。
現在日本の自動運転は、自動車自体の技術を向上させるための研究開発と、社会実装に向けた実証実験が並行して進められています。
政府はさまざまな走行環境を想定した実証実験を実施および支援することで、社会実装のために必要な環境や条件、仕組みなどの検討を行い、自動運転の社会実装に向けた安全性評価や社会的受容性の醸成といった取り組みを行っています。
自動運転に関する自治体の取り組み事例を紹介
自動運転の開発や普及に向けた取り組みとしては、国土交通省や内閣府が主体となった「自動走行実証プロジェクト」と呼ばれる自動運転移動サービスの実証実験が進められています。
ここからは、高齢化が進む中山間地域やニュータウンの中心で実施されている自動運転に関する自治体の取り組み事例を紹介していきます。
中山間地域における自動運転サービス
高齢化が進む中山間地域の移動手段、人流や物流の確保を目的とした取り組みとしては、「道の駅」などを拠点とした自動運転サービスの実証実験が実施されています。
2017年度に全国13ヶ所で1週間程度の短期実証実験が行われ、2018年度には、全国5ヶ所(福岡県みやま市、長野県伊那市、秋田県上小阿仁村など)で1〜2ヶ月程度の長期の実証実験が行われました。
その後、滋賀県東近江市や福岡県みやま市など全国数ヶ所で、自動運転サービスが本格導入されました。導入されている自動運転車両は、いずれの自治体でもヤマハ発動機株式会社製で定員6名(うち乗客4名)、走行速度は時速12kmとなっています。
なかでも、福岡県みやま市では九州初となる自動運転を利用したコミュニティバスの運行を、2021年7月19日から開始しました。ルートは全長約7.2km、便数は1日5便です。乗車料金は一般料金が100円、高齢者・障がい者・小学生は50円、未就学児は無料となっており、年末年始、ゴールデンウイーク、お盆をのぞいた月曜日から金曜日まで運行しています。
この自動運転バスは、みやま市の特産品である山川みかんの色「オレンジ」と、自動運転への先進的な取り組み・技術が、地域の未来を切り開く希望の星「スター」になってほしいという願いが込められ、「オレンジスター号」と名付けられました。
自治体初の自動運転バス【茨城県境町】
自動運転バスを初めて定時・定路線で運行開始したのは茨城県の境町で、2020年11月26日から現在も運行を続けています。
乗車料金は無料で乗車人数は11名、運行時間は土日祝日も含めて午前9時25分〜午後4時、便数は20便です。
バスのルートは「道の駅さかい」を発着所として、高速バスターミナルまでの約8kmを走行するルートと、「シンパシーホール」までの約6kmを走行するルートがあり、合計16ヶ所の停留所をつないでいます。今後住民の要望に合わせてルートの拡大などを行い、利便性を高めていく予定です。
各停留所には高速バスやカーシェアの乗り場、サイクルシェアの駐輪場などがあり、さまざまな交通手段への乗り換えができて便利です。
自動運転バスについての詳細は、下記関連記事をご覧下さい。
自動運転バスに注目しよう!メリットや実証実験、実際の運行事例を紹介
自動運転はいつ実現する?社会実装の目途
日本でも自動運転の技術開発は進められているものの、現在実用化に至っているのはレベル3までです。
政府は、2025年を目処に高速道路での完全自動運転(レベル4)の実現、物流での自動運転システムの導入と普及、限定地域での無人自動運転移動サービスの全国普及などを目指し、実現に向けた取り組みも進められています。
実際に、特定の条件の下で完全自動運転が可能なレベル4の自動運転車の公道走行を許可する制度が盛り込まれた道路交通法の改正案は、2022年3月4日に閣議決定され、国会に提出されました。
早ければ2022年度中には地方の遠隔監視のルート走行バスなどに実用化される見通しです。
自動運転の今後に注目しよう
自動運転は、ドライバーの負担を軽減するのはもちろん、ドライバーに起因する交通事故の低減や交通渋滞の解消、高齢者の移動手段確保など、さまざまなメリットがあることが分かりました。
しかし、日本の自動運転のレベルは、2022年3月現在でレベル3まで実現しているものの、未だレベル5の「完全自動運転」には達していない状態です。
完全自動運転の社会実装に向けては、制度整備やシステム実証など解決すべき課題も多く、関係省庁一体となった取り組みが求められています。
実際に、国土交通省や内閣府が主体となった実証実験は数多く行われており、一部地域では自動運転車を活用した移動サービスの導入も開始しています。今後の制度整備や実証実験、メーカーによる製品発表など、自動運転に関する今後の動きに注目しましょう。